とりぼっち

主に舞台の感想が好きなように書かれています。

薄ミュについて語りたい

私がミュージカル『薄桜鬼』に出会ったのも職場の後輩が勧めてきたからなんですが、初めて観たミュージカルが鉄ミュっていうヤバいやつ(でも好き)だったので私の中でミュージカルの定義が少し可笑しくなっていました。そんな時に出会ったのが薄ミュです。

過去、乙女ゲームにどハマりしていた時期があったのでプレイしたことはなかったんですが原作ゲームのことは知っていました。アニメをリアタイでちらちら観ていたので、遊んだことはないけど大体の話の流れとかは知っている状態でした。歴史物の性かもしれませんがアニメでも主要キャラばっさばっさ退場していくので乙女ゲー舐めてたと思いました。TV版沖田さんの散り様は凄まじい虚無感を得られます。

主人公に対して私は自己投影するのではなく完全にひとりの登場人物として見るタイプなので、乙女ゲーはノマカプ好きとしても非常に楽しい世界なんですよね。個人的に好きな主人公はコドリアのカルディアと白華の詞紀です。

薄桜鬼についてはプレイしたことがないので主人公である千鶴のビジュアルが可愛いと思ってもそこからノマカプ萌えに発展することはありませんでした。沖田さんの頭がヤバそう、でも人気ありそうというのが第一印象。

そんな沖田さんを薄ミュで演じているのが廣瀬大介さんだったので、後輩に勧められるままほいほい買ってしまいました、沖田篇。まさか私のツボを突いてくる作品だとは思ってもいませんでした。

以下、各作品の円盤視聴の感想です。観た順番に書いています。観ていない作品もあります。全体の感想と見せかけて殆ど千鶴ちゃんとお相手のことしか語っていませんがネタバレにご注意ください。

 

 

・いいなと思うところ

薄ミュで私がいいなと思うところはそれぞれの主演キャラに対して「千鶴」がいるところなんですよね。必ず演じる役者さんが変わるので、千鶴は千鶴でも同じ千鶴ではないんですよ。それぞれ個性があるんですよ。そしてその千鶴と主演キャラがお似合いなんですよ。そのキャラにはこの千鶴ちゃんじゃないと駄目って思えるくらいぴったりなんですよ。

舞台パルマは原作プレイヤーに凄く気を遣っている印象を受けましたが、薄ミュはえらい挑戦的です。抱き締めたり口付けたり押し倒したりします。原作に沿っていると言えばそうなんですがキャラが好きな人役者さんが好きな人に挑戦的だなと思う。ただ志譚を観ると大分抑えめになってるので一作目が2012年だと思うと時代の移り変わりを感じます。

 

・沖田篇

初めての薄ミュ。まさか刀ステで私を一期一振沼に引き摺り下ろした廣瀬さんがあのヤバい沖田さんを演じているとは夢にも思っていませんでした。そしてヤバさでは沖田さんの上を行くと思っている南雲薫をまさか鈴木拡樹さんが演じているとは。あの鈴木さんがこんなところにぽんっと居るんですよ。しかも演歌歌いながら。

原作沖田さんは着物の下から覗く胸元とか見ると割とがっちりした体格のイメージなんですが、廣瀬さんの沖田はひょろっとしていて細い。結核を患っているのも納得のひょろっと具合。お腹周りにタオルを詰めているらしいひょろっと具合です。

沖田篇は千鶴がよく歌っている印象です。歌いながら沖田に自分の気持ちを伝えようと頑張っているのが健気で可愛い。徐々に心を開いていく沖田さんも好き。あと千鶴はノリも良いので演歌も歌ってくれる。その時の沖田の反応とかライブでのお節のやり取りとか見ていると沖田さん油断してたら千鶴の尻に敷かれるなと思いました。

山本さん演じる千鶴は芯が強そうだけど儚い。沖田は強いのに儚い、ぽきっと折れそうなくらい儚い。そんな儚いふたりは辛い目に遭いながらもそれを乗り越えてずっとふたりでいよう、というところで話は終わるので私は「絶対幸せになれよ……」と胸を締め付けられながらふたりのことを応援しています。

後半の怒涛の展開からのエンディングは正直最初は完全に置いて行かれて「え、これで終わり?」とその後彼らがどうなったかを観たくて見たくて仕方なかったのですが、想像ができるからこそ沖田篇は良いのかもしれません。私は推しキャラが苦境に立たされる展開が好きですがそれでも最後には幸せになってほしい派なので彼らには病気も羅刹も乗り越えて幸せになってほしいと思ってますが、別にそれ以外の結末があっても良い。何と言っても彼らふたり儚いので。でも幸せになってほしい。

 

・原田篇

 とんちゃんが左之さんだとお、買うっきゃない。そして私は此処で磯部さんという最推し千鶴に出会いました。めっちゃ可愛い。演じ方も動き方も愛らしい。歌い方は独特で普段より大人びて見えるのも素敵。M2「千鶴」は聴く価値あり。千鶴がお辞儀をした際に反応してくれる近藤さん新八平助がらしくて良い。

原作をCERO:Cにした男・原田左之助の物語は希望に満ちた形で終わります。原田は変若水を飲まないので羅刹化しません。毎回ちょっと楽しみにしている吸血シーンは無いけどひとりの男として千鶴を守ってくれます。演出の毛利さんもカテコの挨拶で「原田篇はミュージカル化するのは難しいのではないかと思っていた」みたいなことを言っていましたが、確かに羅刹化とそれに伴うイベントの数々はかなり美味しいと思います。原田篇はそれをどう乗り越えるかって部分が難しかったのではないかと思っています。あとは結末に繋がるあるシーンをどう扱うかとかもあったのでしょうか。

そのシーンもカットされることなくちゃんとありました。とんちゃんの長い手足が横たわるとちょっとドキドキするじゃないか。あと千鶴が何処までも可愛い。体格差・身長差がドツボです。左之助さんが引っ張って千鶴が膝の上に座るシーンとか体格差がはっきり分かってヤバい。

沖田篇が「この後はもうずっと幸せになってくれよ」って話なら、原田篇は「良かったね、お幸せに!」という話です。圧倒的ハッピーエンド感。左之さんは自分の夢叶えたし、左之さんがいたら千鶴は大丈夫。

刀ステ虚伝の時から思ってましたがとんちゃんは歌うのが好きなんだろうなと思います。彼はとても楽しそうに歌ってくれる。

余談ですがこの原田篇から斎藤役を納谷君が演じています。納谷君が斎藤さんだと。私は納谷君の斎藤篇が観たい観たいと後輩に言いまくっていました。彼が斎藤篇をやったら私はふふってなる自信があるんですが、これは褒めているんです。私は納谷君の運動神経の良さとバクステでの映りたがりっぽいところが好きです。残念ながら彼は卒業してしまいましたが彼の斎藤としての成長を原田篇→志譚土方編を観て感じてほしい。

 

・土方篇

まさかモコナの美香さんをこんなところで見られるとは。個人的に土方篇は薄ミュの一つ目の集大成だと思います。皆に見せ場がある。そして矢崎さんと美香さんが完全に土方さんと千鶴。恐るべき安心感と安定感。私が待ってた洋装千鶴。

前半は土方さんの回想という形で千鶴との出会いからの出来事が語られ、後半は逆に千鶴の回想として、そして千鶴と土方さんの再会で現在の話が進み出すという展開が好きです。また大鳥さんが良い味出してる。薄ミュの良心だと勝手に思っている。千鶴との歌が好きで、あの時の前内さんの千鶴へ向けるいい人オーラ全開の優しい眼差しと微笑みが堪らない。

美香さんの千鶴はいじらしい。健気に土方さんを追い掛けます。土方さんは頑なに突き放す。絆されてるのに大事だから傍に置かないタイプ。千鶴頑張れってなります。

そんな土方さんが自分の気持ちを認めて千鶴に伝えるシーン。歌も素晴らしいですが、表情とか所作とか身長差とか背中に回した手の位置とか完璧です。私はこの瞬間を待っていたんです。ちなみに後輩はこの時の矢崎さんのボルテージが徐々に上がっていって爆発する様が好きだそうです。

後輩が入室時に「失礼します」と言うと私がハンケチーフを取り出すという流れが一時期流行るくらいに土方篇の影響は大きく、完成度が高い。

 

・藤堂篇

感情と感情をぶつけ合う平助と千鶴は年齢が近いこともあって他の人たちとは関係性の雰囲気も違います。タメ口だし千鶴も「平助くん」呼び。呼び捨てじゃなくてくん付けなのが良い。千鶴が後ろに控えてるというよりは横に並んでる感じ。

平助役の池田さんは感情を乗せて歌うのがうまいなあ。泣き演技も素敵で人間に戻れるとは思えないけど千鶴は信じられるってとこの演技は完全に平助が泣いています。

千鶴はハスキー千鶴で田上さんの少年っぽいけどちゃんと女の子な千鶴が素敵です。あの声が好き。お千ちゃんが女性らしいのに対して千鶴は男装をして生きているというのが対比っぽくなっていて好きです。平助が見たがっていた振り袖姿をあの場面で見ることになるのが切ない。

平助は初期に羅刹化し、途中血に狂いかけてそれに平助自身が怯えたり自暴自棄になりかけたりと過程は結構辛いんですが色んな人が支えてくれます。まさかの鬼サイドが仲間になりますがそういう展開好きです。熱い。

山南さんと風間はルートによって立ち位置が右往左往するのが薄桜鬼名物っぽくて好きなんですが、土方篇でラスボスとして君臨した風間が今回は味方となり、対して圧倒的策士として見事に散った山南さんが今作のラスボスとして立ち塞がりますが平助に袂を分かたれた時の呆然とした山南さんは絶対的悪ではないことが分かります。味方さんの表情作りはうまいなあ。

風間は千姫との絡みで格好良さが増していると思います。風間の血を飲み千姫が正気を取り戻すシーンは千鶴には平助がいる藤堂篇だからこそできたものなのではないかと思います。風間、おいしいとこ取りです。風間と千姫の歌がとても素敵。

 

・風間篇

満を持しての風間篇は過去三作(斎藤篇、沖田篇、土方篇)とはテイストが違います。異色な雰囲気です。千鶴役の富田さんの歌唱のガチ度が異色さを際立たせているのかもしれないと思っています。

新選組はどんどん死んでいき、土方さんも風間に引導を渡され、千鶴がひとりだけの状態で舞台の幕が下ります。風間と一緒にいることを選ばない。まさかの原作ノーマルエンドに辿り着きます。見ようによっては千鶴がまだこれから風間と一緒に幸せになれそうな希望を見出せそうな気がするんですが初見では無理でした。私のノマカプ好きな頭がそう考えているだけで、千鶴の「悲しいことを繰り返さないために人間として生きる」という意志は固そうだとも思う。

どうしても私は風間篇のラストに対してほくそ笑んでしまうのですが、理由としては作中あれだけ一緒に居たのに風間より人を選んだ千鶴、そして最後の最後であっさり千鶴の意志を尊重して身を引き良い男っぷりを見せ付ける風間がそこに同時に存在しているからなんですが気持ちは、気持ちは分かるんですが「分かった」じゃないよ風間さんってなります。

鈴木さんの役作りはまず原作風間の低音ボイスを真っ向から否定していて初めて観た時はびっくりしたものです。声高っと思いました。でも今となっては薄ミュの風間はこの声で良いんだと思っています。ストイックエピソードも好き。ちなみに母親も薄ミュの中では鈴木さんが一番好きらしく、卒業した事実を今も受け入れていません。ただし佐々木さんのことは刀ステ時代からヒデと呼び愛でているので認可している模様。

 

・志譚土方篇

刀ステで私の腹筋を崩壊させたまーしー(公式愛称はりんりんらしい)が土方役で主演か……。その事実に後輩の腹筋が崩壊しそうな気配がありましたが、確かに和田さんはギャグの印象が強かったのでシリアスな土方を演じているのを観たら面白くなるんじゃないかと私も少し思いました。

結果的には和田さんは確かに土方でした。どんどん土方に見えてくる。カテコで涙する姿を見て、初リメイク版の主演を背負うっていうのは大変だったんだろうなと思いました。悲伝のドキュメンタリーとかも観ていて、和田さんは熱い人だなと思う。

森さんはとても淡々と千鶴を演じるので、熱い男演じるクールな土方さんと絶妙なバランスを取っています。シンプルなキャラクターになった千鶴が何だか癖になるんですよね。森さんはコメントも淡白で好き。

志譚土方篇は土方篇のリメイク版みたいなものなので殆どの流れは同じなのですが、演出に西田さんが入ったのでシーンごとに色々と変わっています。魅せたい部分とかも演出の人によって変わってくるんだというのが分かりました。千鶴の洋装初登場シーンも上手いこと盛り上がりに使われていて好き。大鳥さんと土方さんの握手がカットされていて残念。

風間戦後に土方さんが辛そうに倒れて千鶴が膝枕し出した時はアニメ版ラストが蘇り「それだけは……それだけはやめろ」とビビりましたが無事にハッピーエンドで良かったです。今後も油断はできないなと思いました。

これだけは言いたいのが沖田さんがちゃんと体に肉が付いているところ。

 

・斉藤篇

初代にして一番の問題作なのではと思っている斉藤篇。風間篇は異色と書きましたが、こちらはこちらでちょっと他と次元が違うところにいる。シリアスなど知ったことかと挟み込まれるギャグシーン。思い出したようにぶち込んできます。違うそこは真面目なまま行ってくれと何度か思った。

斎藤役松田さんはこの作品が初出演初主演らしくて圧し掛かるプレッシャーは凄まじかっただろうと思います。髪の毛先から滴る汗が凄い。その汗から色んなものが伝わってくる。その後の舞台とかで松田さんを見ると全然違うので人とはやはり成長するものなのだとしみじみ思います。ライミュの時点で松田さんの斎藤は美しさのパラメータが限界値突破してると思っています。でも少しぎこちない初代斎藤さんも好きです。

まさか二回目、ハル役の吉田さんが出演しているとは。吉田さんの千鶴はたまにあほの子になるのはやめてくれって思うんですがそれは置いておいて、斎藤さんにそっと寄り添ってくれるでしょう。桜の花弁を下さいと言うシーン、声の演技が可愛らしすぎますね。

シリアスな部分はシリアスだし、斎藤さんと千鶴の歌は切ないけど素晴らしいのですが、それと同時に存在する異次元感。記念すべき薄ミュ初代作品ですが円盤で追い掛ける人が最初に観るべかというとどうだろうかと思う作品。

 

・おわりに

薄ミュはライブまでやってるんですが、そのライブの一作目には過去三作の千鶴が全員出演しているのでそれぞれの相手とのやり取りが見られるわ歌が聞けるわ良いこと尽くしです。楽しい雪村一家と大鳥さんも見られるのでオススメ。

薄ミュがこの世に生み出されたことに感謝。