とりぼっち

主に舞台の感想が好きなように書かれています。

【感想】舞台「スペシャリストたちの夜」

1月25日(土)、26日(日)に舞台「スペシャリストたちの夜」を観劇しました。

25日は19時公演を、26日は11時30分公演と15時の大千秋楽を観ました。

その時は全然意識していませんでしたが今年初めての観劇でした。観劇初めで推しさんを見られて嬉しい。

結論から言うと超面白い舞台でした。

あらすじなどの情報がないままの観劇だったので一体どんなことになるんだとどきどきと不安でそわそわしていましたが期待を超えました。3回観ましたがいずれも笑っていました。

以下、ネタバレを含んだ感想です。ご注意ください。

 

 

 

今回出演されている御三方は同じ事務所に所属されており、そちらが警察監修において10周年を迎えた記念に企画されたのが「スペシャリストたちの夜」でした。アフタートークでもツッコまれていましたが警察監修10周年のお祝いにそこにノータッチの俳優部が「何するか考えて」と振られるという。しかしこちらとしては五社プロダクションさんありがとうございますでした。

 

・ストーリー

警察監修の人のドラマを作りたいので脚本を作るために奔走する話なのですが、売れない脚本家・稲葉(大神さん)の成長物語でもありました。

キャストさんは3名だけでも舞台上には色んな登場人物が出て来ます。全員が兼役をしているのですが、その中でも加藤さんが一番着替えていてどのキャラも全然違う演技で凄かったです。

少ししか出てこない登場人物でもストーリーに絡んできてキャラが濃いので背景とかが気になりました。僅かな時間で全ての登場人物に興味持てる脚本ってすごい。ニシオカ・ト・ニールさんすごい、演者さんすごい。

話を戻すと、全員が主人公みたいな雰囲気があるのですが個人的には稲葉が物語上の主人公なんだろうと思います。

最初は報酬30万円が欲しくて脚本家の仕事を受けて、警察監修の森本さん(加藤さん)に怒られていじけて適当になって森本さんにしなければならない取材をADさんにしてごまかしの脚本を作ったりします。脚本の依頼者であるAP・田中(渡辺さん)に叱咤され森本さんからチャンスを貰い森本さんのことを調べていく。森本さんの過去を知り、あることを決意した稲葉は最初の頃の稲葉とは別人で、良い脚本が書けたんだろうなと思えるラストは清々しかったです。

 

・笑えて切なくて笑える話

コメディだということは前情報から知っていましたが、常に笑っていられました。警察監修の豆知識も豊富で、だからといってそれを茶化したりとかではなく「なるほど」と思えるように豆知識を混ぜ込みながら笑わせに来てくれました。

特に間の取り方がすごくツボで、居酒屋での気まずいけど面白い空間が笑うしかなかったです。分かる、すごくよく分かる。

しんみりするシーンもあって人間ドラマとしても心に沁みるものがありました。主な登場人物みんな厳しいことも言うけど優しいので此方の気持ちも温かくなります。

後唐突にビーエルになろうとして私は本当に堪えていたもの全部吹き出しました。

Twitterでも書いたのですがこの舞台に出てくる登場人物にはひとりひとりドラマがあって応援したくなります。特にADさんを応援したい。出世してほしいし、もう一度脚本家を目指してくれても良いよ応援する。

 

・稲葉(大神さん)

分かる~その気持ち分かる~ってなるキャラクターでした。

脚本家としての熱意は最初から持っているとは思うのですが、森本さんが扱い辛くてADさんに逃げてふざけた脚本を作っちゃうところは駄目だけど気持ちは分かる。友人でもある田中だから良かったものの他の人にしたらまずいことやりましたよね。若気の至り?彼らの年齢設定はっきり明言されていただろうか。

共感性の高いキャラなのでその分見ていてうっと目を逸らしたくもなりましたが、稲葉は根は真面目でした。逃げようとしたけど若手俳優の一生懸命な姿を見て森本さんからもう一度チャンスを貰って田中と一緒に考えたりして努力します。

森本さんの過去を知った時からの稲葉の涙が熱い。これは大神さんの涙が熱い。腐った部分全部流れ落ちたのではと思えるほど稲葉は成長して、森本さんにも認めてもらえます。大千秋楽で間近で見た大神さんの流れる涙が忘れられない。

大神さんを初めて拝見したのですが演技に惹き付けられる。うまく言語化できないんですが演じるキャラそれぞれの「そのキャラはそういう演じ方だよね」と納得できる演技をしてくれる方だと思いました。シンプルにど直球に私のツボを突いてくる。

コミカル演技の安定感が凄いし新進気鋭の若手脚本家には言ってることは分かるけどイラッとしました。

 

・田中(渡辺さん)

厳しいこともはっきり言うけど稲葉のことを見捨てず寄り添ってくれました。主要人物3人の中でぶっちゃけヒロインポジションに見えてきたのは別作品のフィルターが掛かっているかもしれないけどどちらかと言うと立ち位置も一歩引いたとこが多かったので強ち、強ち……。いやでも最後の突然のビーエル(後述)でやっぱりそうなのかもと思いました。

森本さんとの関係性も好きで、森本さんが「きみのことは信じてるから」って言うのがとにかく好きです。年の離れた人たちの信頼関係が好きです。田中が常に森本さんに敬意を払っているのも良くて、お辞儀が綺麗。あと立っている時も座っている時も背筋が伸びていて綺麗で好き。ワイシャツの裾がズボンにインした姿がどツボなので正直それを渡辺さんがやってくれていてドキドキでしたし毎公演1回だけ裾が出た状態で現れるシーンがあってそこでもどきどきしていました。ジャケット1回も羽織らないのが良い。

渡辺さんのコミカル演技やっぱり好きです。顔芸に始まりズッコケもあるのでそれがよく見える席に座りました。ADさんの「何もないのに転んじゃった」が仕草併せて可愛いし面白い。

渡辺さんのスタイルが良くて格好良いってなっていました。例の最後の場面で稲葉の肩に手を置いた時も身長差もあって格好良かったものの「おや」っていう空気を感じたらキスしようとしたので最後の最後で一番吹き出しました。

実は念願だった女装が見られました!暗闇の中左端から現れるがたいの良いウェーブの掛かった髪の女……渡辺さんでした。腕の筋すごい。

場面的には重要な場面なんですが最初は直視すると笑いが込み上げてきました。2回目からは何かもうそのママが好きになってきてもっと見ていたくなってくる。稲葉を消すために追いかけてからの下りが本当好きです。

 

・森本さん(加藤さん)

滅茶苦茶人情味に溢れた人というのが終盤で分かるのですが、それよりも前にADに対してだったり田中や若手俳優、近藤(犯人役)に対しての接した方とかで気難しいけど根は良い人っていうのが分かるようになっています。それを踏まえて過去に何があって何をしてきたのかが分かると森本さんのこともっと好きになります。笑い方がめっさ特徴的でしたが笑った顔見られて良かったと思える。

加藤さんは色んな役をやっていました。でもそれぞれ全然違う人すぎて凄い。若手俳優の子が良い笑顔でアフトでもはけた後でも笑顔の残像があると言われてましたが本当に笑顔残っていました。

森本さんに似ている設定のラーメン屋の店主のリュウちゃんは森本さんに寄せてるんですけどそれでも別人というのが分かる演技って加藤さん器用過ぎませんか。リュウちゃんは現役時代の森本さんが担当した加害者側の家族で、当時のことを稲葉たちに話してくれますがつらい、つらい……。森本さんが居たからリュウちゃんはいまもやれているんだと思います。奥さんいないのかなとか背景が気になって仕方ない。

 

・アフトゲスト

KIMERUさん、永山さん、高橋さんの回に居ました。本当にたまたま渡辺さんの縁の人たちが出られる回でした。

キメルさんがかなりのアグレッシブな方というのが分かりました。役者さんのご両親とご飯に行くとかすごい(役者さんは不在)。この方は常に周りを観察していると思うので面と向かったらなんでも見透かされそうです。渡辺さんが再現してくれたコンビニ店員の役やってほしいし死体役も見たい。

永山さんは普段は本当にイケてる人だなと思います。鉄ミュの兄さんのばたばたっとした可愛らしさは何処へやったのか滅茶苦茶イケてる人でした。ふざけてるんじゃないよと渡辺さんを叱る永山さんに笑いました。

高橋さんはスペシャリストたちの夜にも協力(舞台監督?)されていて裏方で動いていたらしく、たぶんアフトの準備で椅子出してるのも高橋さんでしたか?

多才だなあ顔小さいなあリリイベの時より痩せてないか?と思いながら正面から眺めていました。この日はト・ニールさんも出てくれたので殆どマイク係していました。チックトック炎上したのか……。

ト・ニールさんの声が好きすぎてどうしようかなと思いながらもお話聞いていました。

裏話とかが聞けてたいへん満足な時間を過ごしました。渡辺さんがいつもいじられてました。舞台上の小道具もそれぞれのキャストさんたちの私物ってすごい。早着替えが何回もあったのですが舞台上で着替えるっていう演出良いなあ。

 

・警察監修

話の中に豆知識がたくさん盛り込まれていて楽しく分かりやすく知識を吸収できました。警察監修というのがどういう風にドラマに関わっているのかも分かったし、最終的には制作側に任せるそうですがどれだけリアルにするかの塩梅とか大変そうです。

リュウちゃんラーメンの話は実話を基にしているそうで、森本さんのような人って本当にいるんだなとぐっときました。そういう人もいるからさあ出会いに期待しちゃうんですよ。あと警察には休みが無いって話におう……ってなりました。

 

・最後に

終わってしまった!もっと観たかった!

警察監修に関わる話ということで最初は難しい話なのでは、それでコメディって笑えるのか、と何やかんや考えていましたが杞憂でした。

警察監修を題材にしているけど主人公はその外側にいる人なので観客と同じ視点でリアクションもしてくれてすぐ入り込めました。

そしてこれは稲葉と田中のバディものでもあり、ふたりの今後も見たい。

劇場は新宿スターフィールドという小劇場でたぶんライカ観に行った新宿FACEよりも規模小さくて最前列とか舞台とすごく近くて「これが小劇場……」と緊張してました。

余談ですが今回自由席だったので遠征前に会社の後輩に何処に座ればいいかアドバイス頂いていました。あと会場で知り合った方々にもアドバイス頂きました。お陰で渡辺さんがよく見えましたありがとうございました。

前から2列くらいは背凭れなしのベンチ席だったので尻が駄目になりましたがそんなことどうでもいいくらい面白かったです。小劇場のルールとかまだよく分からないけど雰囲気好き。