とりぼっち

主に舞台の感想が好きなように書かれています。

【感想】舞台『囚われのパルマ-失われた記憶-』

6月22日(土)、舞台『囚われのパルマ-失われた記憶-』を観劇しました。大阪公演初日、マチネとソワレ両方観ました。朝から晩までずっと囚われていました。

最近もっくんを推し始めた母が同行。そもそもチケットを取ったのも母が観たいと言ったからでした。

舞台を2公演も観ることが初めてだったのですが、同じ舞台を何度も観ることの良さに気付きました。よく舞台が好きな職場の後輩も言っていましたが、シーンごとに作っていくドラマや映画と違って舞台は物語の1から順番に作られていき、しかもそれが観客の目の前で行われるので1公演ずつ毎回違うものになります。演技も違ってくるし、ハプニングだって起こり得る。物語の理解度も増していくし、推しが何処から現れてどう動くのかも分かるので目で追い易い。一時停止も巻き戻しも出来ませんが、それでも生の舞台って良いものです。

話を戻して、忘れっぽいので忘れる前に舞台パルマの感想を書いていこうと思います。原作、舞台のネタバレにご注意ください。

  

 

ハルトが「あなた」に出会うまでを描いたビハインドストーリー。

公式に書かれている通り、舞台はそれを前提とした話になっています。原作であるゲームの存在は以前から知っていましたが、プレイし始めたのは舞台を観に行くと決めてからです。観劇当日で1章が終わってないくらいの進行度でしたが、他の人の感想やネタバレに目を通していたので原作知識はある程度あったつもり。お陰で舞台の話も大体は理解できたので、原作を予習していない人には難しいし退屈と感じる部分もあるかもしれません。事実ソワレで私の前の席の女の子が滅茶苦茶動くし基本頭が斜めに傾いていて退屈なのかーと思った。

とか言いつつ以下、観劇当日のツイート。

絶賛してるんですけど予想以上に真面目な舞台で1回観ただけでは話がよく分かっていません。前回観たのが頭のネジをどれだけ飛ばせるか選手権やってるみたいな舞台*1だったので温度差も凄かったし、軽い気持ちで観る舞台じゃないと思いました。OPEDで歌ったり踊ったりしないし、日替わりとかで笑える部分もいくつかあるけどネジは飛ばない。2回目の方が体感時間も短かったので話としては観れば観るほど、理解すればするほど面白いものだと思います。

 

サンケイホールブリーゼ

真っ白なロビーと真っ黒な会場でした。ロビーでは原作ゲームのBGM「約束」が流れていて心穏やかな気分になります。原作リスペクトを感じる。

 

・相談員とハルト

「あなた」=相談員=原作ゲームのプレイヤーで、舞台でどういう扱いになるのか気になっていました。全く触れられないのではと思っていたのですが劇中結構がっつりハルトに認識されてるし言葉も掛けられました。制作側が相談員とハルトの関係をとても大事にしている印象です。篠木とハルトの絡みを心配してる人は安心して観られるのではないでしょうか。ハルトは研究に没頭、篠木は目的を達成する上でハルトに興味を持ちますがかと言ってハニトラとかには繋がらず2人の間にそういう雰囲気は一切流れません。

 

 ・ハルト

舞台公式サイトには載っていませんが名字は「如月」。名前より名字で呼ばれる如月さん。名前で呼んだのってたぶん両親だけではないだろうか。

開幕時、原作の姿で現れるのでドキッとします。原作のハルトが見られるのは最初と最後だけです。

自分が周りからどう見られても気にならない。他人の感情が色で分かるけど謝っている先輩の久保田に対して顔も上げず作業しながら返事をしてるあたりコミュニケーション能力が低い。でもちょっと浮いてても認められてるので職場の同僚に恵まれています。周囲の話自体は聞いていて、カフェの隣のテーブルで新しい研究員が入って来るっていう話題が出てそれに反応している。ダンケシェン。突然単語を復唱するので天然は入っているはず。ばたんきゅー。

元々そういう性質なのか、両親の事故死をきっかけに心を閉ざしたのか、ゲームをやっていたら分かるのかもしれません。

だけどスイッチが入ると話を聞いてくれる久保田と郷田の分のコーヒーを注文し、かつおかわりにまで気を遣えたりする。前半は研究研究研究でマッドなイメージもありましたが、新薬の危険性に気付いた彼は政木に新薬開発の中止を訴え声を荒げます。普段大人しい人が声を荒げるし、その理由も他人を想ってです。ハルトが薬の研究をしているのは「人を笑顔にする」ためで、漸く彼がどういう人か分かった気がします。

疑問点としてはハルトが何故記憶を失ったのか。新薬のデータを消していって残るは自分の記憶だけだと彼は呟きます。その後政木の暗い感情と記憶に当てられたかのように意識を失いました。この2つが偶然重なった結果記憶が失われたんでしょうか。

フードを目深に被って心を閉ざしたハルトの前に新しい相談員が現れます。靴音が響いて近付いてくる感じが好き。照明の演出も綺麗でした。ガラス越しに2人が出会って、ゲーム本編に続いていきます。その手にタッチしたい。

公演中ずっと首を寝違えていた太田さん。元々好きな役者さんでしたが太田さんがハルトを演じてくれて良かったと思います。凄くハルトに囚われていました。毎公演最後に2人ずつ挨拶をしていくんですが、他の人の挨拶中ほぼ無表情で虚無を見詰めていました、囚われています。繊細な演技が繊細なハルトに合っていて私の中では太田さんとハルトが繋がりました。劇中シャツとネクタイ姿になることが一度だけあるのですが、太田さん意外と上半身ががっしりしている。でも腰から下は細い。

 

・篠木

優秀な諜報員らしいですが実はドジっ子なのではと疑っている。ハルトが彼女と会って頭痛を起こしたのは嘘を感じ取ったからなのでしょうか。

研究員時と諜報員時だと声のトーンが変わるのが好きです。対八木沼には頑張って優秀諜報員を演じているようにも見えて可愛い。

ハルトに近付きそうで近付かない。迫りそうで迫らない。むしろ迫られるのは山辺ですが可愛らしいものです。篠木とハルトが二人っきりになるシーンってあったっけ……と悩むほど絡まない。篠木は電話の中でハルトのことをよく話題に出しますが相手は八木沼だ。終盤で篠木とハルトは別々にですが政木の部屋に忍び込みます。ここで漸く絡んでくるかと思ったらそういうわけではないのですが、篠木は図らずも原作へと続く物語の終わりを見届けました。あの後すぐに研究所は辞めたのでしょうか。

 

・久保田

まさかの「如月さん」呼びで思っていたキャラと違った人その1。でも良い先輩です。プロジェクトリーダーに抜擢されたハルトに嫉妬する場面もありましたが闇落ちすることもなく、新薬について相談してきたハルトに嫉妬の感情をぶつけることもなく研究者として諭します。

同僚の中では最初に篠木を怪しみ、篠木がもっと悪だったら彼女の正体を突き止めてハルトにメッセージを残して命を落としていたと思う。

 

・郷田

思っていたキャラと違った人その2。絶対政木の腰巾着で嫌味な裏切りキャラだと思っていました。そんなことは全然なくめっちゃ良い人です。郷田さんごめん。

とにかく優しくて良い人なんですよ。郷田さんの良さは是非DVDを買ってご自身の目で確かめてほしい。マウスにも優しい、ひとりぼっちハルトにも優しいので残って実験を手伝ってくれる。ハルトが久保田だけでなく郷田さんも相談相手に選んでくれて嬉しかった。

 

山辺

あなたはそういうヤツだと思っていたよ。嫌味だけど根は良い人。入院したハルトを心配してくれます。その時のしょぼん具合が良い。その時の台詞があいつは抱え込み過ぎみたいなものだったと思うんですが嫌味だけど根は良いヤツっていうのが凝縮された素敵な台詞でした。

篠木の軽いハニトラジャブに初心な反応を見せてくれます。島本との先輩後輩コンビも好き。

最後の挨拶での清水さんのちょっとしたはっちゃけが楽しかったです。

 

・島本

黒髪じゃない! そこに開幕早々衝撃を受けましたが茶髪=島本と覚えやすかったです。チャラいし軽いけど先輩がバインダー忘れたと言ったらすかさず取りに走っていくちょっとした真面目さを併せ持つ今時の若者。

ハルトを気遣ったけど予想外のマジレスされてしょげた後は特に仲直りとかもなかったので彼が最終的にハルトをどう思っているのか気になる。

ブロマイドは黒髪ですが、瑛さんによるとあれは入社当時の島本だそうで納得。

 

・政木

悪い人なんですけど人間臭い。ハルトを通して想い人である涼子の姿を見ています。ずっと恋をしています。愛に囚われているし涼子に囚われているし、恐らく義人にも囚われている。そしてハルトにも囚われていると思います。

愛に囚われているので倒れたハルトに対して救急車を呼んでくれる。でも舞台を観るだけではよく分からない人でした。涼子が好きで義人に嫉妬してそれが原因で二人が亡くなったっていうのは分かるんですが、やはりゲームをやらないと政木は理解できなさそうです。

一瞬だけ若かりし頃の政木が現れますが切ないけど涼子に恋する表情が素敵です。

 

・涼子と義人

ビジュアルが好きすぎるお二人。特にお父さん、ブロマイド買いました。

涼子さんはあのスカートでしゃがんでくるのでドキッとします。二人の手繋ぎに癒され、事故に遭った後のハルトを呼ぶ悲痛な声に落ち込む。

どうやら「人を笑顔にしたい」と義人さんも言っているようなのでDVDで絶対確認します。

最後の挨拶では二人は隣り合わせに立ってるんですが他の人の挨拶聞きながら顔見合わせたりしててめっちゃ夫婦で可愛い。マチネの挨拶で「千秋楽で成仏したい」みたいなことをぶち込んでくる愛純さん好き。

 

・祥子

カフェの店員さん。フルネームは小林祥子(さちこ)、ラスボスですね。

安心と信頼の研究員と観客の癒し&息抜き空間であるカフェで、笑いをも提供してくれる素敵な女性です。ハルトをイケメン認定し大盛りビーフシチューを振る舞ってくれます。その時のハルトの反応が好き。他日替わり要素もご用意されています。

最後の挨拶では右端で祥子と島本がきゃっきゃっしています。時折郷田さんも混ざります。

 

・八木沼

この人の物語は劇中では全然進んでいないんですよね。目的を達成できたわけでも、逆に政木に返り討ちに遭うわけでもない。まだまだこれからなんだと思います。篠木八木沼コンビも割と好きです。

 

・狩谷

謎です、この人は一体何者なのか。ただの看守ではなさそう。最初は政木の指示で八木沼を騙しているのかと思っていましたが、電話の相手はまた別の人物っぽい。

今までの相談員と面会しているハルトを見る時の視線から冷たい人ではなさそうというのは分かる。

ソワレの挨拶で母は漸く演じていたのが女性だと気付く。これはどろろでも起こった出来事です。

 

・まとめ

浅く軽く原作を知っている私でも観劇するまではどういう話になるのか不安に思う時もあったのですが、結果は観に行って良かったと思える舞台でした。とても原作を大事に、相談員に気を遣って話が作られていると思います。真面目で難しいっていう印象は変わりませんがそれは悪い意味ではない。キャラクターもそれぞれ濃いのでハルトが相談員と出会った時、他の皆は何をしているのかがとても気になります。

でもやっぱり原作をプレイ済みの方が理解は深められたと思うのでゲームやります。面会延長もするでしょう。

 

・細かいメモ

ノックを3回するハルト好き。

マチネで笑いどころを理解した客席がソワレでよく笑うようになる。

*1:鉄ミュ